いくら頼んでも無理。 お父さんは運転してくれない。 お母さんの誕生日は家で祝ったらいいという。 子供達はがっかりしている。 ばあちゃんを誕生日の食事に連れて行ってあげたかったのに。 「じゃあバスで出かけよう」と僕が提案した。 みんなが賛成した。 みんなの出かける準備が出来た頃には、もう遅くて お父さんはもっと機嫌が悪くなっていた。  バスも遅れてやってきて、ますますお父さんはイライラしてきた。 ショッピングセンターに着くやいなや、お父さんはスタスタとレストランを探し出した。 お父さんにとっては和でも洋でも中でも料理なんて関係なかった(これがお母さんの誕生日だというのも関係なかった)。 運悪く、料理もなかなか出てこず、お父さんはまた文句を言っている。 お会計を済ませて、少し酔いもまわったお父さんはヨレヨレっと僕達を追い越したかと思うと、今度は家に帰るためバス乗り場めがけて、またスタスタと歩き出した。 お父さんがエスカレーターにたどり着いた時 僕達はまだ10mほど後にいた、そしてまだ下に降りてて行くつもりも無かった。 ゆみが「お父さん!」と叫んだが 遅かった。 お父さんはエスカレーターに足をのせながら振り返った。 エスカレーターに乗って遠のいて行くお父さん、、、。 すると なんとお父さんが両手を高く上げてまるで僕達を つかもうとでもしているかのようにこっちに向かって走りだした。 最初、僕達は唖然としていた。 お父さんがエスカレーターの上でジョギングをしている。 突然 僕達は大爆笑し始めた。 しばらくの間 お父さんは前に進むことも無く 後に進むことも無く 走り続けていたので、僕達も笑い続けた。 とうとう疲れ果てたお父さんは エスカレーターに連れ去られて行ってしまった。 そして 僕達をすっかり楽しませてくれたお父さんは今、下の階から僕達を見上げて立ちすくんでいる。 こんな出来事こそ、きっとお母さんが望んでいた誕生日プレゼントだったのかもしれない。 最後に、お父さんが上に戻ってくる前に お母さんは お父さんのクレジットカードを取り出し 子供達を連れて宝石店に向かって行った。