人は育った環境によって物の見方が変わってくる。 昨日の晩御飯にお母さんがイカ料理を出した時、僕は そのイカの足を、その体から切り離された足を じっと見つめていたのだった。 子供の頃から そんな物は食べたことがない。 そのクルッとカールした足には小さな吸盤が沢山付いている。 『あの吸盤はまだ 何かにくっつくことが出来るのだろうか』という疑問が頭から離れない。 ゆみは そんな僕の疑問はくだらなさすぎると笑った「それは食べ物やで。おもちゃじゃなで」と。

お母さんは「そんなん、もう料理してるんやから くっつくワケないやん」と僕の考えを却下した。

僕は守りの体制に入った。 でも、その後僕の疑問は長くは続かなかった。 理由は そのイカの足がお母さんの注意も引きだしたからだ。 僕は イカの足をじっと見つめているお母さんに「お母さん、くっつくかどうか試してみよう!」と提案した。 子供達も催促し始めた。 お母さんの子供のような興味心が とうとう勝った。 驚く ゆみを 目の前にして、お母さんはイカの足を摘み、ステンレスの冷蔵庫のドアに 押し付けた。 くっついた。 でもまだ続く。 お母さんは もう一つイカの足を摘んで今度は冷蔵庫のドアに張ってあるエミリーの写真の口の上に押し付けた。 『よしっ、くっついた』と心で思った。 また ご飯を食べだした僕の横で お母さんは子供達と楽しそうに しばらくその実験を続けていた。